2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
「それよりも!朱にどうしても助けて欲しいことがあって!」
「帰省の荷造りでしょ?」
「そう!さすが!朱!」
「ふふ、その為に兄さんの部屋に来たんだしね。久しぶりの帰省でいろいろ困っているんじゃないかな、て」
私が説明するよりも早くそれを理解した朱に私は感心してしまう。
むしろ説明は不要だった様子だ。
どこまでできる弟なんだ…。
これだとやっぱり朱の方が兄に思えてしまう。
しっかりしすぎている。
「助かるよ、朱。ありがとう」
「いや、お礼はいらないよ。僕は兄さんの役に立てることが嬉しいし、どんどん僕がいないとダメになって欲しいし」
「ん?え?」
笑顔で私を見つめる朱の言葉がどんどんおかしい方向へ行っている気がして首を傾げる。
「兄さんはなーんにもしなくていいんだよ?僕が一生面倒見てあげたいから」
困っている私にくすりとどこか妖艶に笑う朱に心臓がドクン!と跳ねる。
あ、あれ?目の前にいるのは中3、15歳のまだまだ可愛らしい私の弟だよね?
何でそんな色気出してんの?
「…一生は無理でしょ」
「無理じゃないよ」
「いやいや無理だよ」
「無理じゃない」
やっとの思いで朱の言葉を否定すると朱は不機嫌そうに頬を膨らませ私に抗議してきた。
お互いに折れることなく何回も何回も「無理」「無理じゃない」と言い合っていたのだが、だんだん朱の瞳から光がなくなり、いよいよ本気で怒り始めたので私が折れてしまった。
うん、姉だし、兄だし、今回は可愛い弟朱に譲ろう。
「それじゃあ早速始めるね」
そして朱の満足げなこの言葉を合図に私の荷造りが始まった。
…数分でほぼ朱一人で(むしろ私邪魔)準備を済ましてしまったことに私はいよいよこの先の未来に不安を感じた。
もうこの時点で朱という存在が生活に不可欠な存在になっていたからだ。
本当に一生面倒見られるコースなんて嫌だよ。
朱の未来の恋人、嫁に申し訳なさすぎる。