2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
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気が全く乗らない帰省まであと1日。
私は少しでも寒さがマシになるだろうと昼食後に龍の所へやって来ていた。
毎日必ず会う約束をしている龍とも明日から1週間会うことができない。
『しばらく家に帰るんだな』
龍はそのことがものすごく気に入らないようだった。
声だけで気に入らない気持ちが伝わってくる。
「そう。もう今から憂鬱だよ」
私は龍の不機嫌な声を聞きながら項垂れた。
私だって帰らなくてもいいのなら帰りたくない。
あんな家、私という存在が全否定されている気がして息苦しくて仕方ない。
『じゃあ帰らなくてもいいだろう。ここにいろ』
「…そうしたいけどできないんだよねぇ」
『関係ない。ここにいろ』
「…」
さすが大厄災様、妖の絶対的トップ。
わがままだし、人の話を聞かない。
何度も言うが私だって帰りたくない。
でも無理なものは無理だ!
『…暁人、出て来い』
龍の要望に対して困り果てて無視をしていると、龍は急に低い声で暁人の名前を呼んだ。
「はい。お呼びでしょうか、龍」
すると祠を囲う木々の中から濃い藍色の髪に赤い瞳をした妖、暁人が現れた。
暁人は甘い顔で微笑んでいる。
昼間でしかもここ能力者の中心部でよくこんなにも堂々としていられるものだ。
まあ、これも全て龍の力のおかげなのだが。