2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
『…紅だけではありません。神である私やシナリオでさえも把握できていない、1度目の記憶を持った存在がいます。その存在も大きく影響を与えているはずです』
『つまり私や龍のような存在がいるんだね』
『ええ。言い切ってもいいでしょう』
神様のしっかりとした返事に最初に頭に浮かんできた人物は朱だった。
ずっと私は朱の2度目を疑っていた。
私が知っている中で朱が1番1度目と違うところがあったから。
仮に朱も私と同じ2度目だとして朱は一体何を望んで世界を変えるのだろうか。
『…朱ですか』
ぽつりと私の心の中を読んだらしい神様が朱の名前を呟く。
そして神様はそれだけ言うと急に黙ってしまった。
「…」
おーい。他に言うことや伝えることはないんですかー。
あまりにも神様が何も言わないので困り果てて神様に声をかけてみるが神様からは何も返ってこない。
神様は私が黙っても私の心を読めばいいが、私にはそんな手段はない。
つまり今のだんまり神様とこれ以上の会話を望めない。
ちょっとー!神様ぁ!?
「…」
やはり何も聞こえない。
ここでまたいきなり神様は私に答えなくなってしまった。
本当に気まぐれな神様だ。
意味深な感じで『…朱ですか』とか言って急に黙らないで欲しい。
気になるではないか。
まあ、こんな感じな神様の対応には慣れているけどさ!