2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
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やらなければならないことがたくさんあった訳ではないが、あっという間に時が過ぎ、年が明けた翌日。
私は父と共に毎年恒例の能力者上層部が集まるものすごく堅苦しい新年会に嫌々参加していた。
新年会の会場は能力者御用達の高級ホテルのホールで壁紙や家具など全て和で統一されているホール内はいつ見ても惚れ惚れする美しさがある。
昔から新年会など特別な会を開催する際はここを利用することが多かった。
そんな素敵な会場で私は今、紋付袴の正装をした男集団に囲まれいる。
上層部の方々のきっちりとした重たい空気の中で。
何て居心地の悪い場所なのだろうか。
私が葉月家の次期当主でさえなければこんな会に参加する必要なんてなかったのに。
この新年会に次期当主として参加する義務があるせいで私は今回帰省しなければならなかったのだ。
本当に最悪な会だと思う。
「…」
この息苦しさに耐えられず思わずちらりと右隣に視線を向ける。
そこに朱が居てくれればどんなに落ち着くだろうか。
だがそこには私が望んだ朱の姿はない。
朱は帰省してからずっといろいろな理由を付けて私の側にいてくれた。
久しぶりに離れるだけでこんなにも心細くなるとは思わなかった。
私、ますます朱が居ないとダメになっているのでは?
「紅様、また美しくなられましたね。いつも紅様の美しさには驚かされます。さらには強さも兼ね備えていらっしゃる。守護者に選ばれるのも納得でございます」
「ありがとうございます」
私の周りにいた男の1人の話に私は笑顔でただお礼を言う。当たり障りのない会話。
同じような会話をこの男以外ともしてきた。
代わり映えのない話が続くが彼らとはこのくらいのことしか話せる情報がないのも事実なので仕方がないことだった。
「強さと言えば秋の強化合宿でのご活躍も聞きました。圧倒的であった、と。誰よりも早く状況を理解し、的確な判断を下した後自らも動き殆どの妖を退治したとか」
同じような会話が繰り返される中、興味津々といった様子で1人の男が話し始める。
この話はまだここではしたことのない話題だ。
だからこの話を初めて聞いた私は耳を疑った。
話が盛られている!
ほとんど私が退治できる訳ないでしょ!どれだけの数があの時合宿所を襲ったと思っているんですか!