2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
「紅にとって悪くない話でしょ?元々優秀で歴代稀に見る強さであることは知られているけどそれに実績も伴えばいよいよ紅は最強をほしいままにできる。そうなれば紅は絶対的な地位と影響力を持てるんだよ」
「…」
ちょっとした会話一つでもこれからのことを見据えられる蒼はやっぱりよく考えているし頭の回転が早いと改めて感心してしまう。
自分の地位だとか私は考えていなかったから。
別に自分の立ち位置なんてどうでもいいし。
「自分の願いを叶える為には力はいくらあってもいいからね」
相変わらず何を考えているのかわからない美しくも胡散臭い笑顔で蒼は私を見つめた。
蒼自身の為ではなく、私の為に蒼はわざわざ力を貸してくれたのか。
「蒼、ありが」
「あ、でも僕は人に囲まれて必要以上に褒め称えられて困っている紅の姿が可愛くて話していたんだけどね」
「…」
危ない。
私の為ではなく自分の為に私を辱めたやつに危うくお礼を言うところだった。
先程までの暖かい気持ちを返せ。
楽しそうに笑っている蒼を私はスンと表情をなくして見つめた。
…でも、きっと私の為でもあるんだろうな。
そこはちょっとだけ伝わっている。
蒼はわかりづらいNo. 1男だから素直に私の為だなんて言うはずがない。
「紅!蒼!」
微妙な空気で蒼と2人でいると向こうから紋付袴姿の武がこちらに声をかけてきた。
「…」
武の隣には同じく紋付袴姿の琥珀もいる。
2人ともよく紋付袴が似合っていて、蒼と同じく華とオーラがある。