2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
「どこも紅の話で持ち切りだな。よ、本日の主役」
「蒼がそれはもうたくさん俺の話してくれたからね」
何故かちょっと誇らしげに私に話しかけて来た武に私は苦笑いを浮かべる。
何故武がそんな顔しているの。
ちょっとむず痒いではないか。自分のことのように喜ばれると変な気持ちになる。
「やっぱり蒼か。さすがだな」
「まあね」
私と武の会話を横目に琥珀が無表情に蒼を見つめると蒼はにっこりと笑っていた。
そこから私たち4人は会場の皆様に遠巻きに見守られながら他愛もない話を繰り返した。
私たち次期当主件守護者が全員集まって話している場にはさすがに誰も近寄れないのだろう。
ただすごく視線を感じるだけで話しかけられることはなかった。
ただ1人を除いては。
「やあ、四神の次期当主のみんな。4人揃って集まっては誰も近寄れないよ?誰もが君たちと話がしたいというのに」
しばらく私たちだけでいると能力者の頂点に君臨する、私たちよりも上の人物、麟太朗様が私たちに困ったように話しかけてきた。
私たちは全員一斉に麟太朗様に頭を下げる。
もう流石に1人だけ遅れるという失態は犯さない。
流れるように美しくみんなと同じように挨拶くらいできる。
全員が頭を上げると早速蒼が「つい久しぶりの再会を喜び話し込んでしまいました」と麟太朗様に笑った。
全くその通りだし、言っていないだけで私たちだけでいる方が気が楽、だというところもある。
「ふふ、そうか。君たちは仲が本当にいいね。絆は強ければ強い方がいい。だけどこういう場では他の人とも交流をして視野を広げることも大切だね」
私たちに優しく笑う麟太朗様に私たちはそれぞれ「はい」と一言返事をする。