2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
「姉さん」
「…っ」
自分のことでいっぱいいっぱいで忘れていた朱に突然声をかけられて朱の存在を思い出す。
そして私は慌てて朱の顔を見た。
全てを知ってしまった朱は私を嫌うだろうか。
「…っ」
私を見つめる朱の表情に私は目を見開いた。
朱が心底嬉しそうに笑っていたからだ。
…何故?
どうしてそんなに嬉しそうなの?
「しゅ、う?」
訳がわからなくて問いかけるように朱の名前を呼ぶ。
すると朱は目をさらに細めて私をますます嬉しそうに見つめた。
「ずっと姉でなければいいのにと思っていた」
「…え」
「姉さんは僕の姉じゃない」
いつものようにぎゅ、と朱に抱きしめられる。
他人であるとわかっていて朱は今私を抱きしめている。
その意味は一体何なのだろうか。