2度目の人生で世界を救おうとする話。前編






朱は私を異性として見ていて朱は私の弟ではなくて。

ああ、もうダメだ。


私の首にぐるぐるとマフラーを巻き付けている朱がもうどうしようもなく異性に見えてしまう。



「さあ中に入ろう?」



真顔になったまま何も言わないでいると朱は私の返事なんて待たずにいつものように私の手を掴んでさっさと歩き出してしまった。




*****




「兄さんにお願いがあるんだ」



朱に腕を引かれるまま戻った私の部屋で妙に真剣な表情をした朱が私にそう言う。


お願い?


一体朱が私に何を頼みたいのか分からず私は何も言わずに朱の次の言葉を待つ。
1度目の今頃にこんな真剣な顔をした朱に何か願われた記憶はないのだが。

この真剣な顔からして何か重要なことなのかもしれない。

例えば世界が変化したことによって朱では手に負えないことが起きてしまった、とか。
それで私を頼った可能性は十分にある。



「もうすぐバレンタインでしょ?僕姉さんの手作りチョコが欲しいんだ」

「…」



ん?


真剣な朱から話された話の内容が予想とはあまりにもかけ離れているもので返事もせずただただじっと朱を見つめてしまう。






< 281 / 296 >

この作品をシェア

pagetop