2度目の人生で世界を救おうとする話。前編





「はぁ…」



お菓子の焼き加減難し過ぎでは?


クッキーから視線を逸らしてとりあえず今日はもう遅いので片付けを始める。


朱は甘いものが好きだ。
あの様子だし何をあげても朱はきっと喜んでくれる。
でもやるからには自分の納得したものをあげたい。
満足するまでいろいろなお菓子を作って試行錯誤したい。



「紅」

「…っ」



後片付けをしていると暗闇から誰かが私の名前を呼んだので流石に悲鳴を上げそうになる。


だ、誰!?


声の方へ急いで振り向く。
するとそこには暗闇にぼんやりと浮かぶ綺麗な男の人が立っていた。


幽霊だ。



「…うそ」



冷や汗をかきながらぼそりとそう呟く。


本当は「いやぁー!!!」とか「ぎゃあああ!!」とか反射的に叫びたかったがぎりぎりのところでそれを飲んだ。

誰かにこんなお菓子作り現場を見られたらまずい。
葉月紅の近寄りがたく儚い印象が崩れてしまう。



「ん?」



だけどよく見るとそのお化けに何だか見覚えがある。
思い切ってキッチン中を照らす火を出してみるとそこには無表情の琥珀が立っていた。


な、何だ、琥珀か。







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