2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
「どうしたの、琥珀」
私はその場で大きく息を吐いて琥珀を見つめる。
幽霊ではなく、琥珀であることは安心できたけど何で琥珀がここにいるのだろうか。
「…お前、ここ数日ここで料理していただろう」
「ん?そうだけど」
「やっぱり…。寮の調理室でメガネをかけた女の幽霊が毎晩毎晩何かを作っているって学校中の噂になっているぞ」
「え!」
無表情だがどこか呆れたように私を見つめる琥珀に私は思わず声を上げた。
学校内ではむしろ私の方が幽霊扱いされていたみたいだ。
だが、確かに薄暗いキッチンで毎晩ちょっと髪の長い私が料理をしていたら幽霊に見えないこともないかもしれない。
いや、見えるか。
そんな不本意な噂が立っていたなんて。
「俺はたまたま調理室の近くを通ったから様子を見に来ただけだ。この学校で女に見間違えられる奴なんてそういないしな」
「…そ、そっか」
多分琥珀は私が噂になっているとわかっていたからここへ見に来たのだろう。
忠告も兼ねて。
女に見られている時点で危ない。
女であることは絶対に秘密なのに。
「ごめんね、琥珀。もうここを使うのは止めとくよ」
「その方がいい」
申し訳なさそうに琥珀に謝ると琥珀は無表情のまま頷いてた。
「女の幽霊の正体を見破る、何て言い出している輩もいる。何をされるかわからないからな。気をつけろよ」
「うん」
そうだろう。年頃の男の子がこんな噂を聞いて大人しくしているとは思えない。
最初こそ怖がっていてもいつか幽霊に興味を持った生徒が集まってキッチンに現れた可能性は十分にある。