2度目の人生で世界を救おうとする話。前編






「はい、これ」

「ん?」



いつもの流れにはない私からの謎の袋に武が不思議そうに首を傾げている。

さらには「俺、紅に何か貸してたっけ?」と言い出し、そもそもバレンタインだと思えていない様子だった。



「バレンタインだよ。いつもありがとう」

「は?」



状況を理解できていないようだったので笑顔で説明して日頃の感謝を口にする。
すると武は真顔で固まった。


あれ?期待していたリアクションではないんだけど。
もっと朱みたいに嬉しそうに「ありがとう!」て言ってもらえる予定だったんだけど。



「…これ、紅が?俺に?こんなこと初めてじゃん…。今まで一度だってこんなこと…」



ぶつぶつと武が何か言っているが私にはよく聞こえない。
武は目を見開いて袋を凝視している。



「…まさか手作り、とか」

「?そうだけど」

「…っ」



まだこちらを見ずにチョコを凝視したままの武の言葉がやっと聞き取れたので答えると武は耳まで真っ赤にしてまた固まってしまった。



あらら?
これはもしかしなくても嬉し過ぎてフリーズしてる?








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