2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
「ありがとう、紅」
いつの間にかいつもの胡散臭い笑顔に戻っていた蒼はそう言って私に笑いかけた。
2人とも喜んでくれたみたいでよかった。
あとは龍だけだ。
*****
2月ということもあり、外は寒い。
マフラーとコートで完全防備をしていても寒さを感じずにはいられない。
私は放課後になると、武を何とか撒いてこの寒い中、龍の元までやって来ていた。
「龍、はいこれ」
私は龍に会うや否や、龍の祠に向かってチョコの入った袋を差し出しだ。
『何だそれは?』
怪訝そうな龍の声が祠から聞こえる。
見たこともない私からの袋に龍は『またどこかへ行ってきたのか?』と言っている。
そうなるか。
どこか行く度に龍へはお土産を渡していたから今回もそれだと思ったのだろう。
「違うよ。これはバレンタインのチョコで人間はこの日に好きな人にチョコとかお菓子をあげるの」
『そうか』
状況がよくわかっていない龍に私はバレンタインについて説明する。
それをどんな感情で聞いていたのかわからないが龍は静かに私の説明に相槌を打っていた。
『じゃあこれは紅が俺を好きだから俺に渡すという訳だな』
「そう。日頃の感謝を込めてね」
『…』
探るような声で私に質問する龍に私は答える。
龍は何やら考え事を始めたようで私に返事をせず黙ってしまった。
だから私は話し続けることにした。
「このチョコは私の手作りなんだよ。今の龍は食べられないから祠に供物として置く形になるけどまた龍が食べれるようになったら作るからね」
『…いや、そのチョコは保存しておこう。お前の好きの気持ちはいつかきちんと食べたい』
「え」
黙っていた龍のいきなりの予想外なアンサーに変な声が出る。
た、食べるの?保存して?
龍、実体で居られるようになるのまだ先だよね?
さすがにチョコ腐るんじゃない?お腹壊すんじゃない?
そのことを龍に伝えてみたが龍は『俺を誰だと思っている?そんなもので腹を壊すものか』と呆れたように言われてしまった。
龍が特別なのか?それとも妖だから?