2度目の人生で世界を救おうとする話。前編






『俺の望む〝好き〟ではなくても嬉しいよ、紅』

「ん?…そう?嬉しいならいいんだけど…」



意味深なことを言う龍に少しだけ戸惑ってしまう。

友情の私の好きは龍の望む好きではないのなら一体どの好きを求めているのだろうか。

異性?家族?好きにもいろいろな種類があるのではっきりとはわからない。

おまけに今は顔が見えない龍の複雑な気持ちを察するのは難しいものがある。



『ところで紅、一つ聞きたいことがあるのだが』

「ん?何?」



バレンタインの話は終わったとばかりに龍が話題を変える。
私は首を傾げて龍の次の言葉を待った。



『姫巫女はまだ見つからないのか?1度目ではもうとっくに見つかっていただろう』



龍の真剣な声がこの静かな空間に響く。
聞こえるのは龍の静かな声とざわざわと木々を揺らす風の音だけ。

静かな私たちしか居ない空間。



「…」



龍への答えはYESだった。
まだ姫巫女は見つかっていない。

神様が年末に言った通り姫巫女を見つけるはずの蒼が姫巫女を探していないようで姫巫女がまるで見つかる気配がない。

これに焦って今能力者側は総動員で姫巫女を探している始末だ。


これを龍に素直に伝えていいのだろうか。

龍は私の味方でも能力者や人間の味方ではない。
人間は殺す対象で敵だ。

そんな龍に姫巫女の情報を正しく教えることは能力者や人間を危険に晒すことに繋がらないだろうか。

これで一度失敗している。
どうしても龍と姫巫女や能力者関係の話をする時は慎重になってしまう。








< 293 / 296 >

この作品をシェア

pagetop