2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
「…この話兄さんにしたっけ?」
「え?この話って?」
「いや、実戦大会の準備の話」
「してないと思うけど?今聞いた」
眉間にシワを寄せて私を見つめる朱にそんな朱を不思議にそうに見つめる私。
だがしかし、少し考えて私がおかしいことにすぐに気がついた。
今この時点で朱が大会運営に関わっていることを知らないはずの私が朱の話に一切驚かずむしろ納得さえしているのは朱から見ればどう考えてもおかしいことだろう。
私からしてみれば2度目なので知っていて当然だったがこれはあまりにも油断しすぎた。
「明日の準備のことは聞いていなかったけど、中等部から朱が異例の実行委員参加の話は噂になっていたからね。朱が実戦大会の実行委員だってことは知ってたの」
未だに眉間に深いシワを寄せる朱にさらりと嘘を付いた。それはもう自分でも完璧過ぎるほど自然に。
私は葉月家次期当主なのだ。これくらい強かではないと。
「ふーん。そんな噂があったんだね」
朱は私の話を信じたようで納得した様子だ。もう朱の眉間にはあの深いシワはない。
よかった。急に作った話だったけど信じてもらえたみたいだ。
「うん。で、どうして朱は実行委員なんてやっているの?」
この際だから前回から気になっていた、何故中等部の朱が実行委員なのか何となく朱に聞いてみる。
すると、
「兄さんの実戦が気になるから」
と至極当然のように朱が答えた。
「は?え?わた、俺?」
今度は私は動揺する番だ。私も性別を隠すために外面は完璧なのだが、動揺しすぎて思わず一人称が〝私〟になりかける。