2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
時を戻すことほんの数分前のこと。
文字通り死んだ私が次に目覚めたのは辺り一面何もない真っ白な空間だった。
どこ、ここ。私、死んだよね?
意識ははっきりしている。死んだ瞬間さえもしっかりと記憶にある。
天国……とか?いや、それはないか。
死んだ時と同じように横たわっていた体を起こしながら辺りを見渡してみるが本当に何もない。
天国ではないにしてもとてもじゃないがここが地獄には見えない。あまりにも何もなく、静かすぎる。
私の地獄のイメージはもっと禍々しい。
じゃあ、結局ここはどこなんだよ、て話だ。
「あー!やっと目覚めたのですね!」
一人だと思っていたがそうではなかったらしい。
呆然としていた私の様子に気づいたのか誰かが私に声をかけてきた。
声の方へ視線を向ければそこにはものすごく綺麗な男の人が立っていた。
床に着いてしまうほど長い髪はこの白い空間に溶けて消えてしまいそうなほど白く絹のような輝きがある。顔もとても端正な顔立ちで髪と同じ色のまつ毛から覗く瞳は春から夏へと移りゆく木々の優しい緑色と同じ色だ。
背が高く細身である彼の出立ちはまるで生きているようには見えない精巧に作られた人形みたいだった。
「早く!早くこちらへ!」
人形の彼は慌てた様子で私の腕を掴み半ば無理矢理立たせるとどこかへ向かって走り出した。
「え、え、何!?え!?」
訳がわからなかったが抵抗する意味も特にはないのでそのまま人形の彼のなすがまま一緒に走る。
すると走っていくうちにいつの間にか真っ白だった空間は見覚えのある場所に変わっていた。
そこは私が死んだ学校の真上だった。