2度目の人生で世界を救おうとする話。前編




*****


1日かかった実戦大会も無事終了し、辺りはすっかり暗くなった。
決勝を制したのは蒼。実力、経験値共に蒼の方が一枚上手の一戦だったと私は思う。

やはり任務で実際の実戦の経験を積んでいる蒼とそうでない武とでは実力は五分五分でも実戦となれば話が変わってくるのだろう。今回の武の敗因は経験値の差ではないだろうか。

ちなみに実戦内容をこんな風に分析している私だが、前回も同様の結果だった。
決勝を観ながら「あー。なんか前回もこんな感じだったわー」と思っていた。

そして現在。私は今、寮内の武の部屋の前に立っている。

理由は一つ。仲直りをする為だ。
琥珀といる時も感じたが、私はまだ次期当主として認められている存在であり、彼らの仲間だ。
これから先はどうなるかわからないが私は彼らとの今の関係が心地いい。
少しでも長く彼らと穏やかな時間を過ごしたい。

だから武ともいつまでも喧嘩をし続けたくないのだ。


コンコンッ

「武、いる?入ってもいい?」


控えめに扉をノックして扉の向こうにいるはずの武に声をかける。
すると…


「おう」


とぶっきらぼうな声が扉の向こうから聞こえて来た。


「お邪魔します」


ガチャっと扉をゆっくり開けて武の部屋へ入る。
部屋いっぱいに広がる武の香り。茶色と水色のもので統一された部屋。とてもとても懐かしい。

昔…初等部の頃はよく彼の部屋に行って共に過ごした。時には勉強を共にしたり、時には能力を共に向上させる為に練習したり。何もせずにぼーっとしてる時だってあった。


「懐かしいなぁ」


ポロリとあまりにも懐かしくてつい思ったことを口に出してしまった。


「は?何が?」


そんな私を怪訝そうに武が見つめる。
おっとそうだよね、今の私がこの部屋を懐かしむ訳がないよね。






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