2度目の人生で世界を救おうとする話。前編






そして全員の道具の確認が終わると、能力実技の授業が始まった。
授業の内容は火の能力者はロウソクに火をつける、雷の能力者は電球に電気をつける、風の能力者は風車を風で回す、そして俺たち水の能力者はコップに水を入れる、だった。

なんて簡単な授業なのだろう。俺は冬麻家の次期当主なのでこのくらいのことはもう家でやっていた。


「…」


期待していた分、つまらないな、と思いながらも授業に集中することにする。
俺の目の前にあるコップに水が入ることをイメージする。するといとも簡単にコップにたっぷりの水が現れた。


「あら、さすがですね、冬麻様。よく勉強されていらっしゃる」


その様子を見ていたらしい先生が大変素晴らしそうに俺に近づき、笑う。


「いや。このくらいできて当然です」

「そうなのですね。さすがのレベルです」


特に褒められるようなことでもないので先生の言葉を普通に否定すればそれでも先生は俺を褒めてきた。

褒められることは嬉しい。けど、褒めるレベルが低すぎる。


「葉月様はどうですか?」


俺との会話を終え、次は隣にいる紅の番だと先生が今度は紅の方へ丁寧に笑いかける。
俺も気になったので先生と同じように紅の方へ視線を向けた。

紅は俺たち同世代の中でも群を抜いて強い能力の持ち主だと昔から有名だった。
あまりお互いにだが能力を見せ合ったことがないので紅の実力がどのようなものなのか気になったのだ。


その時だった。


ボウ!と大きな炎が紅の手元から舞い上がったのは。
そしてそれは瞬く間に教室を火の海へと変えた。


「っ!葉月様!」


先生が異変に気づいて焦ったように大きな声をあげる。


「ご、ごめんな、さい」


そしてこの炎の生みの親である紅も焦りと恐怖の表情を浮かべて先生を見つめていた。


「え!何これ!」

「うわー!怖いよー!」

「助けてー!」


一瞬にして火の海に取り囲まれた生徒たちはパニックになり、恐怖で叫んだり、泣いたりしている。


「…っ!」


一方俺はこの状況にただ驚いていた。

これは紅がやったのか?たった1人で?こんな広範囲を?俺はきっとこの部屋の10分の1も水で満たすことができないというのに。




   




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