2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
「お前はバケモノなんかじゃねぇ!こんなもの俺が消してやる!」
やっと紅の元へ辿り着くと俺は思いっきり叫んで自分が今出せる精一杯の水を頭に思い浮かべた。
強くてたくさんの水!出ろ!
バシャアッ!
大量の水が紅と俺の上から降り注ぎ、ここら辺一体の火を消す。
全てを消すことは叶わなかったが紅を取り囲んでいた火を消すことには成功したようだ。
「武!」
安心してその場で座り込んだ俺の名前を心配そうに紅が呼ぶ。
あぁ、今ので力使い果たした。全然足に力が入らねぇ。
「無茶しないでよ、武っ。武が死んだら私…っ」
「死ぬかよ、バカ」
紅の泣きそうな声が耳に入る。俺と目線を合わせるように座り込んでいる紅の頬に俺は優しく触れて不敵に笑ってみせた。
「紅。お前が暴走したら俺が止めてやる。お前を人殺しなんてものにはさせない。お前はバケモノなんかじゃない。俺程度が止められる奴がバケモノな訳ないだろーが」
止められてよかった。本当はすごく安心した。だがそれを悟られないように紅を見つめれば紅は泣きそうな顔をして笑った。
「ごめんね、武。ありがとう。わた…俺、もっと強くなるから」
そして力強く俺を見つめ返した。
それから俺は暴走する紅をもっと完璧に抑えられるように強くなる努力をし、紅はもう暴走しないように俺と同じように努力をした。
よく紅は能力を暴走させたが、今回の暴走よりも酷い暴走を起こすことはなかった。
俺も紅もそれだけ努力をしたからだ。