2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
まぁこの変化が世界にどう影響を及ぼすのかは私には全く検討がつかない話なのだが。
そうこう考えている内に目的の場所へ辿り着いた。
目の前にあるのは小さな祠。今にも壊れそうなほど傷んでいる祠を見て、私はどれほど長い年月ここへこの祠があったのかを改めて思い知らされた。
なんて懐かしいのだろう。
懐かしいと感じながら、その今にも壊れてしまいそうな祠に優しく触れる。
『アナタの目的はこれだったのですね』
「そう。前回も丁度今頃だったでしょ?」
神様に言われたことを私はいつものように頭の中では答えずに声に出して肯定する。
前回もこの古びた祠に丁度このくらいの時期に出会っていた。
あの時はただ何も思わずにふらっと歩いていたらいつの間にかこの場所に辿り着いていたが今回はそこが違う。
「龍」
人間からは大厄災と呼ばれていた妖の名前を呼ぶ。久しぶりに呼んだその名はもちろん龍に届くことはなく、この森の中にすぐに消え去ってしまった。
この祠には大厄災と呼ばれる最恐の妖、龍が封印されている。前回はこの祠が何なのか姫巫女が現れるまで知らなかったので勝手にお気に入りの逃げ場にしていた。
だが、今の私はこの祠が何なのかよく知っている。
私は彼に今日は会いに来たのだ。
明日には琥珀と妖退治の初任務に向かわされるから。
今の龍には私の声は届かないし、届いたとしても龍にとっては知らない人間の声なのでただただ不快でしかないだろうが。
『こ、う?』
「え…」
祠から随分と懐かしい声が聞こえ、思わず自分の耳を疑う。