2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
龍が私に応えた?
そんなはずは…
『紅!そこにいるのか!?』
「…っ!龍!?」
聞こえるはずのない声…龍の声が必死に私の存在を確認しようとする。そのことに驚き私は龍に応えるようともせずただただ龍の名前を叫んだ。
『…紅、紅なんだろ?』
「う、うん!そうだよ!私がわかるの!?」
『…当たり前だろう、わかるに決まっている』
やっと龍に応えると龍は感極まった声を出した。
『会いたかったぞ、紅』
そしてそう私に言った。
おかしい。何故龍が今の時期にそんなことを言うのか。今回の今の時点では龍と私は初対面のはず。それなのに龍は私を、私と言う存在を知っている口ぶりだ。まるで私と同じ2度目を生きているように見えてしまうほどに。
『神様、質問なんだけど』
『大方、アナタの質問内容は想像できますが、ここはあえて聞いてみましょう。何ですか?』
『…この世界で前回の世界の記憶を持っているのは私だけだよね?』
『はい。そうです。私はアナタにだけしかその権限を与えていません』
『例外は?』
『…私の知る範囲ではありません。ですがこの世界は一度私の手に負えないほどシナリオから逸脱し滅びた世界です。私の予想範囲外の何かが起きてもおかしくないと言い切れますね』
つまり、今目の前で起きていることは現実的にあり得なくはないということになる。
うだうだ考えるよりも、直接隆に聞いてみる方が早いだろう。