2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
「紅!」
もう一度叫んで紅に呼びかける。だが仰向けに倒れたまま、紅が動き出す気配は一切ない。
…死んだ、のか?
「クソッ」
最悪の事態が頭をよぎる。
今すぐ紅の元へ飛んで行って助けたい。だがそれは叶わなかった。
今目の前にいる4人の守護者と姫巫女によって。
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『それから俺は再びこの祠に封印された。そして今、目の前にあの時死んだはずの紅がいる』
紅が殺されてしまったあの時から今に繋がるまで、紅に淡々と伝えていく。
その話を黙って聞いていた紅だったが、常に辛そうな表情を浮かべており、あの時どれだけ紅も辛かったのかありありと伝わってきた。
紅は今は2度目の世界だと言った。
突拍子もない話だ。だが、今の状況はそうでなければ成り立たない。
紅にはまだ伝えていないがこの俺を封印している封印もおかしいのだ。
まだかけられて日が浅いはずなのにまるでもう数年で解けてしまいそうなほどに脆い。
さらにここ数ヶ月ここで見てきた情景はどこか既視感のあるものだった。
これは紅が言う、2度目、ではないだろうか。
何千年も生きてきたが、そんな経験一度たりともしたことがないのですぐには答えは出せない。
だが、俺はそんな気がしてならなかった。
もしこの世界が2度目だと言うのなら。その2度目を与えてくれた不思議な現象に柄にもなく感謝をしよう。
そして紅を孤独にして、殺してしまった人間共を今度こそ皆殺しにしてしまおう。
俺の話を聞いて考え込む紅を見つめながら俺はそんなことを思っていたのであった。