2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
「私が目指しているのは妖と人間の共存。妖の世界に必要なのはその世界を統べる王と秩序。私はまず秩序の為に戦うよ。龍が帰ってくるまで」
『ふっ、お前は本当に優しいやつだな。俺は俺を理不尽に封印し続け、俺からお前を奪った人間なんて殺したいほど憎い。だから妖の王になるつもりなどないし、秩序なんてものは作らない。本来俺たち妖は縛られることが嫌いだしな。例え俺が王になったとしても喜んで人間を皆殺しにしろと言うだろう』
「…そうするべきかどうかは龍もいろいろな人間をよく見て決めて欲しい。人間にだっていい人はいっぱいいるんだから」
『人間は紅さえ居ればそれでいいだろう』
何とか龍を説得したかったが中々上手くいかない。だがそれは仕方ないことだった。
彼は何千年と人間への恨みを募らせてきた存在。その恨みを簡単になかったものにはできない。
私たち人間は妖は〝悪い者〟として育てられてきた。だから私は妖たちと触れ合うまで妖はどんな妖でも〝悪い者〟でしかなかった。だが、そんなことはないのだと私はもう知っている。
龍もそうなって欲しいと願っているのだけど。
「…」
だが今の龍に何と言葉をかければ私の提案に頷いてくれるかわからず私はついに黙ってしまった。
今回はもう完敗である。
『紅』
「何?」
『俺は紅をもう2度と失いたくはない』
「うん」
『だが、今は封印をされている身。ここから出られぬ以上俺は無力』
「そだね」
『だから俺はお前を守る為に提案したいことがある』
「何?」
落ち込んでいる私に龍がこれまた淡々と話し始めたので私はとりあえず相槌を打つ。
そして次の龍の提案を待った。