2度目の人生で世界を救おうとする話。前編





寮を出た時にはまだ真上にあった太陽も、今はすっかり沈んで夕方になった。

私は思わぬ労力…龍の無茶な提案の改正の説得に、かなり時間と頭を使った為、疲れの色を浮かべて寮へ帰って来ていた。
その甲斐あってあの無茶な提案は何とか1日1回ということにしてもらえたが、龍はものすごく不満そうな顔をしていた。

本当に頑張ったよ。私。


「…ふぅ」


それにしても龍のあの俺の言うことは絶対、みたいな王様気質には相変わらずで頭を抱えた。
前からそうだったが今の龍はどうも余裕がないようにも見える。

そんなことを考えながら疲れによりいつもより重く感じる自室の扉に手をかける。


「兄さーん!おかえりなさーい!」

「うわ!」


すると上機嫌な朱がいきなり抱きついてきたので私は驚いて思わず声をあげてしまった。


「朱!ただいま!」


が、朱に急に抱きつかれることはいつものことなのですぐに冷静さを取り戻して私も朱を抱きしめ返す。

むしろ我が愛しの弟に抱きしめられるなんて最高のセラピーではないだろうか。疲れた体によく染みる。

お互い抱き合っている状態なので朱の顔はもちろん見えない。私と朱の身長差は今はほぼないので横を見れば見られると言えば見られるが。
近すぎるのでそれはさすがに朱が相手でも羞恥心はある。

今でこそ私と朱の身長差はほぼないが来年になるとこれが変わってくる。急に朱の方が大きくなって私のことを見下せるようになるのだ。
同じ目線でなくなった時は寂しかったものだ。


てか、抱きしめられたからいつも通りな対応をしたけど、何故朱が私の部屋にいるの。








< 71 / 296 >

この作品をシェア

pagetop