2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
「…姉さん」
それを見た朱がどこか悲しそうな顔をする。
何故そんな顔をするのだろうか。
何故今、私のことを〝姉〟と呼ぶのだろうか。
「朱?」
恥ずかしい気持ちもあったがそれよりも今にも消えてしまいそうな朱の様子が心配になって私は朱の名前を呼んだ。
「…これ、痛い?」
「ん?さらし?痛くないよ」
「そう」
朱がさらしに優しく触れる。
「…っ」
触れた箇所が熱を帯びているように、熱い。
きっと前回ならこんなこと微塵も思わなかっただろう。だが、今回は違う。
いくら可愛らしくて愛しの弟でも彼は私の本当の弟ではない。
悪くいえば他人なのだ。
だからどうしても意識してしまう。
煩悩だ。こんなもの。弟を意識してどうする。
煩悩、退散。
「姉さん」
朱は切なげにそう言うと私の胸の少し上に顔を落とした。いつもなら甘えているのだろうと思うだけだが、今そこには何もない。素肌だ。
さすがにこれには耐えられず心臓がドッドッドッ!と大きな音を立て始めた。
し、死ぬ。
「姉さんの心臓の音、よく聞こえるね」
「あ、当たり前でしょ。恥ずかしい」
「ふふ、そっかぁ」
未だ私の胸の少し上から動こうとしない朱だが、何故かどこか満足そうだ。
私はというと先程からずっと茹でダコ状態である。