2度目の人生で世界を救おうとする話。前編





表では平静を保っているが、内心は穏やかではない。
心臓が爆発する。

そんなことを思っているとチュッと音を立てて、胸の少し上を朱に吸われた。

つまりあれだ。何故か朱に私はキスマークをつけられた、ということか?

確認していないのでキスマークが本当にあるのかはわからない。いやそこが問題ではない。
キスされたこと自体が問題なのでは?


「こら!朱!な、な、何!?」

「おまじないだよ。明日任務に行くんでしょ。無事に終わりますようにって」


パニックになって朱を思いっきり引き剥がして叫ぶと朱はまたキョトンした顔で私を見て来た。
その顔には先程の危うげな感じはもうなくいつもの愛らしい朱だ。


そ、そういうことか。
じゃあこれには他意はない、と。

それにしても心臓に悪いし、何よりそんなおまじない本当にあるのかよ!


急いで洗面所に向かって鏡を見れば普通にキスマークがあった。やっぱりあった。


「朱!いい?それはおまじないじゃない!そんなことで任務が成功する訳…」


洗面所から顔を真っ赤にしながら帰って急いで朱の偏った思想を修正しようと声をあげた。
もし他の人に同じようなことをしたら大変だ。

だが…。


「え?兄さん、それおまじないじゃないの?」

「…ゔっ」


そんな私の言葉を聞いて朱が泣きそうな顔をしたことによって私は言葉を詰まらせた。

朱は純粋にこのおまじないを信じていたようだ。








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