2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
*****
高校生になった今、あの頃と比べると紅を取り巻く環境も責任も随分と変わってしまった。
もう紅はあの頃のように〝女の子〟として素直に生きることができない。
だから今日は。せめて今日だけは。あの頃のように少しでも〝女の子〟であって欲しいと願った。
完璧な男でなければならない責任を負っている紅の為に。
そして出来ればあの頃のようにまた俺を頼って欲しいと願ってしまう。
だがなかなか上手くいかないのが現状で、今まさに頼られる所か避けられて、紅は俺の手元から簡単に連れ去られてしまった。
「…」
走り続けて30分くらいだろうか。
だんだん人気もなくなり、廃ビルが目立つようになってきた。
GPSの動きは止まっている。
紅はこの廃ビルのどこかへいる。
焦る気持ちを胸に紅の正確な居場所を突き止めるべく、俺は一度止まってGPSを確認した。
「…」
大体の場所はわかった。
あとはそこへ向かうだけだ。
俺は小さく息を吐くと目的の場所までまた走り出した。