その上司、俺様につき!
興奮気味に帰ってきた飯田君の腕には、緑茶のペットボトルが2本と缶コーヒーが2本抱えられている。
「どうしたの、それ? そんなに買っちゃったの?」
そこまで喉が乾いていたのかと驚きながら尋ねると、得意げに彼は否定した。
「バカ、違うよ。当たりが出たんだよ!」
「……2本も?」
「2本もー!」
飯田君は子どものようにはしゃいでいる。
「2本連続とかすごいじゃん! でも、なんで同じ種類?」
素朴な疑問をぶつけると、
「いや、急に当たりって言われてもさ~。ビビって適当にボタン押しちゃったんだよね……」
照れ臭そうに「へへへ」と彼は笑った。
「二回も?」
「……二回も」
情けない表情で飯田君が答える。
「もー! もったいない!」
「ハハ! こんなこと、たぶんもう二度と起きないのにな。あ~、失敗したわ~!」
残念そうに言うと、飯田君は先ほどと同じ場所に腰を下ろした。
「お金払うよ。いくらだった?」
バッグから財布を出して尋ねる。
「―――いいよ、おごる」
「ええ?」
「焼き鳥代、おごってもらったし」
完全に記憶にはなかったが、飲み代はしっかり自分が支払ったと聞いて、ホッと胸を撫で下ろす。
「そっか、良かった……」
(いや、良くないけど!)
自分で自分のコメントにツッコミを入れてしまったが、飯田君が穏やかに微笑んでいたので、それ以上は何も言わなかった。
静かな沈黙が訪れる。
私も彼も黙ったまま、お互いの気配を肌で感じていた。
私はペットボトルの蓋を開け、ほろ苦い緑茶をゴクゴクと飲み下す。
冷たい液体が心地よく喉を潤し、爽やかな香りが鼻に抜けた。
(……ちょっと落ち着いたかも)
ベンチに寄り添うように植えられた大きな桜の木。
今年の春は例年よりも暖かかったせいか、まだ4月下旬だというのに、もうたくさんの瑞々しい新緑が芽吹いている。
「……ねぇ」
ふと、心にとある謎が浮かんだ。
「何?」
ストレートに質問をぶつけても大丈夫なのか躊躇ったが、想像していたよりも飯田君の返事が軽い調子だったので、思い切って聞いてみることにした。
「―――どうしてここまで、私の面倒を見てくれるの?」
「どうして……ってそりゃ、お前……」
両手を頭の後ろで組んで、まっすぐに夜空を見つめたまま彼が答える。
「罪滅ぼし的な?」
言い終わると私の顔を見て、飯田君はニカッと笑った。
「どうしたの、それ? そんなに買っちゃったの?」
そこまで喉が乾いていたのかと驚きながら尋ねると、得意げに彼は否定した。
「バカ、違うよ。当たりが出たんだよ!」
「……2本も?」
「2本もー!」
飯田君は子どものようにはしゃいでいる。
「2本連続とかすごいじゃん! でも、なんで同じ種類?」
素朴な疑問をぶつけると、
「いや、急に当たりって言われてもさ~。ビビって適当にボタン押しちゃったんだよね……」
照れ臭そうに「へへへ」と彼は笑った。
「二回も?」
「……二回も」
情けない表情で飯田君が答える。
「もー! もったいない!」
「ハハ! こんなこと、たぶんもう二度と起きないのにな。あ~、失敗したわ~!」
残念そうに言うと、飯田君は先ほどと同じ場所に腰を下ろした。
「お金払うよ。いくらだった?」
バッグから財布を出して尋ねる。
「―――いいよ、おごる」
「ええ?」
「焼き鳥代、おごってもらったし」
完全に記憶にはなかったが、飲み代はしっかり自分が支払ったと聞いて、ホッと胸を撫で下ろす。
「そっか、良かった……」
(いや、良くないけど!)
自分で自分のコメントにツッコミを入れてしまったが、飯田君が穏やかに微笑んでいたので、それ以上は何も言わなかった。
静かな沈黙が訪れる。
私も彼も黙ったまま、お互いの気配を肌で感じていた。
私はペットボトルの蓋を開け、ほろ苦い緑茶をゴクゴクと飲み下す。
冷たい液体が心地よく喉を潤し、爽やかな香りが鼻に抜けた。
(……ちょっと落ち着いたかも)
ベンチに寄り添うように植えられた大きな桜の木。
今年の春は例年よりも暖かかったせいか、まだ4月下旬だというのに、もうたくさんの瑞々しい新緑が芽吹いている。
「……ねぇ」
ふと、心にとある謎が浮かんだ。
「何?」
ストレートに質問をぶつけても大丈夫なのか躊躇ったが、想像していたよりも飯田君の返事が軽い調子だったので、思い切って聞いてみることにした。
「―――どうしてここまで、私の面倒を見てくれるの?」
「どうして……ってそりゃ、お前……」
両手を頭の後ろで組んで、まっすぐに夜空を見つめたまま彼が答える。
「罪滅ぼし的な?」
言い終わると私の顔を見て、飯田君はニカッと笑った。