一途な恋とバックハグ
ちょいとおまけ
「角さーん!」
「おお~すみれちゃ~ん!佑くん!」
「お世話になります」
船の前で作業をしてる角さんに大手を振って駆け寄った。
あの偶然の出合いから仲良くなった私達。
角さんは実は王手食品会社の社長さんでこの立派な釣り船を所有してるちょ~お金持ちだった。
でも時々こうやって釣りに誘ってくれる気さくで優しい角さんが私も佑さんも大好きだ。
いつものように荷物の運び込みを手伝おうとしたら船から見知らぬ男性がひょっこり顔を出した。
「ああ、紹介しよう、私の息子の輝明だ」
「はじめまして」
輝明さんは28歳の笑顔の爽やかなイケメンさんだった。
人懐っこそうな目が角さんとよく似ている。
角さんと同じく仲良くなれそうだ。
今日は一緒に釣りを楽しむという。
釣り場に到着。今日の海は穏やかで風が心地良い。
波が荒いと酔っちゃうけどこれくらいなら大丈夫そうだ。
佑さんに付き合って一緒に釣りに行くようになって釣りに目覚めた私はたま~に大物を釣って祐さんを驚かせた。
ビギナーズラックだな、と祐さんには言われちゃうけどこれでも少しは上手くなってるつもりだ。
今日も大物を釣るぞ~っ!とワクワクしていた。
「今日は何を狙う?」
「もちろん鯛です!」
実は釣りは好きだけど餌を触るのが苦手。
代わりに針に餌を付けてくれる佑さんに聞かれて即答した。
今日は婚約したお祝いにおめでたい鯛を絶対釣ろうと心に決めていた。
薬指の指輪をつい撫でてニヤニヤする。
「ふん、釣れたらいいな」
佑さんは絶対ムリだろうって顔して笑うからちょッとむっとする。
「この辺は真鯛や黒鯛がよく釣れるからきっと大物が釣れると思うよ、頑張って」
反対側から輝明さんが声を掛けてくれた。
「はい!頑張ります!」
満面の笑みを向けると爽やかな笑顔が返ってきた。
ふと佑さんを見たらなんか不機嫌な顔をしてる。
「なに?どうしたの?」
「べつに、ほらもういいぞ」
「ありがとう」
「おう…」
微かに笑ってポンと軽く私の頭に手を置いた祐さんが自分の場所に移動し早速釣竿を操る。
さすがは長年やってるだけあって竿を振る姿は手慣れててかっこいい。
ついつい見惚れちゃったけど、それどころじゃない!
絶対鯛を釣るぞ~!と意気込んで私も釣り糸を垂らした。