浅葱色の約束。




どうしてこの男がそんなことを知っているの。

青ざめる顔を何とか隠そうとしたって無駄だった。

揺れる瞳がわかると、男は再び可笑しげに笑い出す。



「私の情報網を甘く見ないでもらいたい。私は孤児が大嫌いでしてねぇ」



それを知っているのは土方さんだけ。

近藤さんも沖田さんも、知らない。


だってみんな私にそんな質問をしてこなかったから。

知られないまま過ごせると思っていた。



「親も居ない溝蛙(どぶがえる)に、ウチの息子を汚されては困るんですわ」



それが決定打。


目の前には大きな大きな壁がある。

それは男と私だけでなく、私と土方さん、沖田さんに近藤さんの前にも立ちはだかっている。


蛙が空を飛びたいと願うようなものと同じで、それは願ってすらいけないこと。



「っ…!!」



───そんなとき。


1つの刃が男の喉元へと突きつけられる。
ヒュッと息を吸う音。

見えなかった。

速すぎて何がどうなってるかわからない。



「…最終手段。───目を閉じていて梓」


「だ、駄目だよ沖田さん…!」



あと数ミリ動かしてしまえば簡単に突き抜けてしまう。

音も気配も感じなかった。


彼はずっと私の後ろに居たはずなのに。



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