浅葱色の約束。




「やめないか総司!!」



とうとう近藤さんが怒鳴った。



「…無理です、真っ当な理由でしょう近藤さん。土方さんだって同じことを思ってるはずです」


「総司!!……局長命令だ」



渋々と刀を鞘に戻し、沖田さんはそれでも男を睨み続ける。



「すまないがこの金と共にさっさと引き取ってくれませんかな」



続けて近藤さんは静かにそう言った。


その音色も、いつも彼から聞こえるものとは比べ物にならない。

眼帯をしていて良かったと思った。

右目の傷が少しだけ滲みるのを何とか隠せられたから。


すると男は立ち上がり様、最後まで私を陥れてくる。



「よく覚えときぃや少年。世の中にはどう足掻いたって幸せになれへん人間はいるんや。勘違いせぇへん方が身の為やで」



わかってるよそんなこと。

そんなこと、ずっとずっとわかってる。

同じ場所にはどうしたって立てない。
立ってはいけない。


勘違い、なんて。


それすらもしちゃいけないよ。



「───帰れ。」



土方さんの冷たい声に、男は逃げるように去って行った。


どうかこの震えが誰にも見つけられませんように。

眼帯に滲むそれを見られませんように。



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