浅葱色の約束。




暗くじめじめした空気は、みんなが集まった部屋へ向かえば一瞬にして晴れてしまった。

笑顔で迎えてくれる男達。

その前には色とりどりの和菓子や駄菓子が並べられていた。



「お、主役登場」



ニシシッと笑った藤堂さん。

なんの主役…?と見つめてみれば、バチッと目が合った土方さんがふっと微笑んだ。



「今日が何の日か知っているか?」



ゆっくり立ち上がった近藤さんは、立ち竦む私の前に来る。


今日……。


考えても考えても、特に何の変哲もない日常だった。

普通に起きてご飯も1人で頑張って食べて、近藤さんや沖田さんの手を煩わせることはなかった。

なんとか雑巾がけも出来る限りやった。


変わったことといえば、朝から雨が降っていることくらいだろうか。



「今日はきっと午後から晴れるんだ」



近藤さんはきっと預言者。

どうにも本当に晴れてしまうような気がする。



「歳月というのは早いものだなぁ」



初めて会ったときのように手を伸ばし、その頬をあたたかな掌で撫でてくれる。

記憶が甦った。



「…覚えているか?」



変わらない笑顔を向けてくれるその人に、すぐにコクコク頷いて答える。


少しだけ冷えた空気。
夏のはずなのに夜は風が冷たくて。

毛布にくるまって地面に座っていた。



「この日は何よりもめでたい日なんだ」



暗闇の中、夢のような場所で。

そんな場所に食べ物を持ってきてくれた人。




「…今日が、君の生まれた日だ」



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