浅葱色の約束。
ドタドタと近付いた1つの足音。
私の背後に回った影は、グイッっと腕を掴んで刃から離れさせた。
土方さんでも沖田さんでも、近藤さんでもないその手。
ゴツゴツしていて泥のような匂いが広がる。
だれ……?
「子供に手出すとは何しとるがか!!」
「あぁ?誰だあんた!」
「わざわざ名乗るもんでもないき!」
「だったら退けってんだ!ガキになめられたままじゃわしの顔も立たへん!」
「面倒じゃのぉ」と呟いて、刀に怯えることなく両手を挙げるその人。
「わかったわかった!土佐の浪人、坂本 龍馬(さかもと りょうま)ぜよ!」
「な、なにぃ…!?坂本 龍馬だと!?」
さかもと…、りょうま…。
聞いたことがある。
新撰組より、この名前の方が頭に入っていたくらいだった。
すごく有名な人だということ。
それだけは分かっていた。
「ほら帰った帰った!わしの顔に免じて許しちゃれ!」
男達は逃げるように去って行った。
助かった…。
でもまさかこの人に助けられるとは思ってもいなかった。
坂本 龍馬……。
本当にこんな喋り方をするんだ…。