浅葱色の約束。




思わず沖田さんの腕を掴んだ。

それを抜いては駄目だと視線で伝えれば、少し目を見開いて。


いつもの柔らかい眼差しに変わった。



「見なかったことにします。なのですぐに帰った方がいいですよ」


「なんや、つまらんの。新撰組っちゅーのは威厳はないんかえ」


「僕は構いませんがね、今あんたを斬ったとしても」



それを挑発と受けた沖田さんから、再びピリピリした空気が途端に流れる。

次に坂本さんが懐から出したものに思わず息が止まりそうになった。


───銃だ。


その黒い手持ちのそれは、引き金さえ引いてしまえば脳天を簡単に貫けてしまうもの。



「…近距離は刀の方が有利って知ってますか?」


「なら試してみるがか?」



刀の柄に手をかける青年、銃を向ける男。

きっと沖田さんが抜いてしまえばどちらかが倒れてしまう結果が目の前。


とんでもないことをしてしまった…やっぱり送ってもらうんじゃなかった。



「さ、坂本さん駄目だよそんなことしたら…!」


「ああ、わかっとる」



それでも銃を下ろそうとしない。

だから私は沖田さんの袖をきゅっと掴む。



「沖田さん…、もう中に入ろう。あのね、お茶買えたよ」


「偉いね梓、近藤さんも喜ぶよ。…危ないから後ろに下がってて」



駄目だ…。
本当にこの人、やってしまう。

私は何てことをしてしまったの。

こんなことになるなら最初から人助けなんてするんじゃなかった。


そう後悔している暇があったらどうにかしなければいけないのに、それでも2人は私が見えていない。

まるで見ようともしていない。



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