浅葱色の約束。
「おい、門の前で屯うんじゃねえ。邪魔だ」
そこでまた新たに加わりに来た男が1人。
いつもなら安心する背中からの声は、この状況では安心どころか不安しか起きない。
また増えてしまった…。
それもよりによって土方さんだなんて。
まだ近藤さんとかの方が話が通じそうだから、確実に彼に来てほしかった。
そんな土方さんも坂本 龍馬に気付くと一瞬にして殺気を放つ。
「…どんな了見か教えてもらおうか」
「どうもこうもないぜよ。わしは友を送りに来ただけやっちゅーに」
「てめえから首取られに来たってのか?随分と律儀な野郎なんだな坂本 龍馬っつう男は」
「えらい物騒なやっちゃ。綺麗な顔が台無しぜよ」
この状況を楽しんでしまっている坂本さんは、土方さんすらをも怖がっていない。
なにより私はいつの間にか坂本 龍馬の友達になっていたらしい。
「迷子なら農民の女に声をかけろと言ったはずだが」
その冷めた目付きだけは私を捉えることはせず、ただ真っ直ぐ坂本 龍馬を見つめている。
「ったく、なにを連れて来てんだよ」
「す、すみません…」
「てめえの目は節穴か?どう見てもこいつが女にゃ見えねえな」
「でも髪下ろせばもしかしたら…」
「んなわけねえだろ馬鹿」
ピリピリした空気感を出しつつも、普段通りの会話を続ける土方さんに少しだけゾクッとした。
こんな状況でも冷静なその人。
鬼の副長をまた見てしまった気分だった。