浅葱色の約束。
土方side




てめえのもの…?
俺は何を言ってんだ意味わかんねえ。

気付いたら弱々しいそいつの胸ぐらを容赦なく掴み、そんなことを口走っていた。



「…どっちかっつうと近藤さんのモンだろ」


「ん?なにか言ったかトシ」


「っ…!なんだ、居たのか」



この男はこうして気配を消して近付いて来るときがある。

それは武士として当たり前の作法なのか、それとも俺がただ単に鈍っただけなのか。



「お前がぼーっとしているなんて珍しいじゃないか。なにかあったのか?」



月を眺める俺へと、男は呟いた。


別になにも無い。
特別なことなんかない。

ただ、先日のやり取りを思い出すと無性に腹立たしいだけだ。



「そんなに俺ぁ阿保面だったか近藤さん」


「たまには良いんじゃないか?トシはいつも眉間を寄せてるからなぁ」


「…放っとけ。あんたのそういうところが嫌いだ俺は」


「ん?どういうところだ?」



そうやって無自覚に煽ってきやがるところだ。

狙ってんのかそうじゃねえのかすら不明だからこそ、質(たち)が悪い。

そしてたまに怖く思うときもある。



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