浅葱色の約束。
「や、やめてくれよ父さん…」
「こいつは何やってもあかんくてなぁ。島原に売り飛ばそうか迷ったんやけど、もう終いにしようや」
「頼むよ…、俺の、たった1人の妹なんだ…」
「妹…?ちゃうで朔太郎。こいつはどこの家の娘かもわからない捨て子や。要らない子なんや」
息子の悲願ですら聞こうとしていなければ、聞こえてすらいない。
そのレンズの先に正気は見えなかった。
殺られるか、殺るか。
その2択しかない現実が目の前。
腰が抜けた朔太郎は、その場に崩れ落ちた。
「近付いたらこいつを殺すで!!」
今にも刀を抜いて飛び出しそうな土方さんに向かって叫ばれた声に、彼は舌打ちを落とす。
「土方さん早くしないと梓が消えちゃいます……!」
どんどん透けていく体に風が通り抜けていく。
その子が居なかったら私は生まれない。
私の人生は今まで誰かに謝らなければいけないような、そんなものだった。
生きていてごめんなさい、生かされてごめんなさい。
そんな気持ちを抱えて、誰にも優しさをあげることなんか出来ないまま。