浅葱色の約束。
前に私は、どんなに酷かったとしてもこの人は朔太郎の父親だから傷付けては駄目だと思ったことがあった。
でも、そんな父親が娘を殺そうとしている。
なにが一番いいのか考えなきゃ、もう時間がない…。
「やめて…、お父さん…」
「わしはお前の父親になった覚えなんか無いわ……!!!」
小さな女の子が泣いている。
頬に突き付けられたそこから、ツゥゥと赤い雫が垂れた。
「本当の子やないと可愛いと思えんのや、咲」
血の繋がりがなんだ。
血なんか繋がっていなくたって家族だ。
孤児だからなんだ。
みんな、そんな偏見だけで勝手に決めつけて。
そんなのもう、うんざりだよ。
でもそうじゃなくちゃんと見てくれた人達は今、私の隣にいる。
だったら───…。
「っ…!!」
ダッ!!!
「っ…!!!梓…!!!」
グサッ───!
「うぐっ…!!」
私が刃へと向かったとき。
透けていた体は元に戻って、刺さった右腹から痛みが追い付いてくる。
せっかく傷が治ったばかりなのに…。
それでも私はこの時代の人じゃない。
この時間に生きる存在なのは私じゃなく、咲という女の子。
「あ…、あなたは父親だ…っ、娘に何をしてるんですか…、」
「ははっ…、溝蛙が一丁前に人助けのつもりか…?」
「ならあなたはその溝蛙以下だよ……!!」