浅葱色の約束。




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トントン、グツグツ、コトコト。

キャベツを刻む音、お肉を焼く音。
スープの味見をする背中。


あなたは、だれ……?



『ふふ、蹴った。梓ちゃんも食べたいって言ってるのかな?』



どうしてそんなに嬉しそうな顔で見つめているの…?

あなたは今、なにを見ているの…?



『早く会いたいなぁ。私が絶対にパパの分まで幸せにしてあげるからね』



腰にまで届きそうな長い黒髪、少しだけ栄養の足りていない細い体。

それでも優しく慈悲(じひ)に包まれた笑顔で笑う女性。


古いアパート。

キッチン奥の居間、テーブルに乗る母子手帳。



“───茜”



苗字が隠れるように乗せられたペンの下にある名前は、「茜(あかね)」と小さく書かれている。

あかね───…。



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