浅葱色の約束。
「なんの用だ」
「え…、沖田さんが呼んでるからって…」
「別に呼んでねえぞ」
無駄足となってしまった今。
これは沖田さんの悪戯?
有り得なくも無いけど、こんなにも意味のない悪戯はしない人なはず。
だとしても説教じゃなかっただけ良かった。
「んで、お前はなんでそんなにびしょ濡れなんだよ」
机とにらめっこしながらもそんなことが分かってしまう土方さんは、もしかしたら背中にも目がついているのかもしれない。
そんなことあるはずないかと自嘲して、ハッと思い返す。
沖田さん、もしかしてわざとしてくれた…?
でもどうして。
女だとはバレていないはずなのに。
「おい、梓」
「………」
「聞こえてねえのか、梓」
着替えなきゃお風呂入らなきゃと背中を向けたまま、足が止まる。
土方さんはヒラヒラと紙切れを持って、首を傾げた。
一応この場所に来て1年経った。
もう2度目の冬だってすぐそこだ。
それなのに今まで1度も名前で呼ばれたことはなかった。