浅葱色の約束。
思い返せばこの人とは、ある意味とても濃い関係だったと思う。
親子だと言い張ったことだってあったし、
いつも土方さんは私が関わることの隣に立っていた。
「風呂から上がったらこれを頼む。…って、聞こえてねえなこのガキ」
それでも親子っていうのは、どうもしっくり来ない。
どちらかと言うとお父さんってイメージはやっぱり近藤さんだ。
じゃあ兄弟?
ってのも、どちらかと言うと沖田さんや朔太郎のイメージ。
やっぱり土方さんは土方さんでしかない。
「───おら梓!!」
「はっはい…!!…な、なんでしょう」
慣れない呼び方と聞きなれた怒号に、恐る恐る返事。
「使い、頼まれてくれるか。墨と和紙を買って来てくれ。場所はここに書いてある」
雑すぎる…。
一見地図かと思ったがどうやら違うらしい。
“町へ出て数個目の骨董屋の隣”と書かれているだけだ。
こんなのただのメモだ。
「土方さん……これってなぁに…?」
「あ?見て分かるだろ、地図」
「やっぱり地図なんだ…」
「やっぱりってなんだ」
見て分からないから聞いたのに、聞いてもやっぱり分からなかった。
「ああ、朔太郎と一緒に行って来い」
お金の入った巾着袋を確認すると、頼まれたものに対してお金が多い気がする。
多めにくれたのかな…。
だんだんと治安が悪くなっている京の町は、なにがあるか分からないから。
土方さんはそんな私に付け足すように加えた。
「残りは好きに使ってくれていい」
土方さんの優しさがかいま見えた。