浅葱色の約束。




目の前の幸せしか見えていない私は、この先訪れる数々の哀しみを想像することすらしていなかった。


本当は今この瞬間も、ゆっくりゆっくりと、その歯車が回っていること。

楽しい日々に、暖かなぬくもりに隠れてしまうそんな暗闇は。



「俺の兄貴なんやろ!?諦めんなや!」


「たまには諦めも肝心だよ!無理なものは無理なの!」


「はぁ!?やっぱ俺が兄貴になるわ!」


「それはやだ!」



時代の残酷さ───…

なんて言葉で簡単に片付けられてしまう程に哀しいものだった。



「だって見てよ…!鬼がいるよ朔太郎…!ここは黙って説教って決まってるの…!」


「いややーー!!俺腹減ったぁ!!」



それでもいつか、私の当たり前じゃなかった当たり前が消えるとき。

そのとき、そんな背中を支えてくれる人はいるのだろうか。



「黙って座れねえのかてめえらは。これ以上騒ぐなら今日そこで野宿だぞ」


「「ごめんなさい」」



誰も、居ないのだろうか。


それでも確実に言えることは、愛情には必ず哀しみが伴う。


朝が来るなら夜が来る。
笑顔があれば涙がある。


出会いがあるなら別れがやってくる。

始まりがあれば、終わりはやってくる。


それはきっとどの時代も変わらないからこそ、美しくて儚いもの。


彼等が消えたとき、私はそのとき何を思うのだろう。








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