浅葱色の約束。
朔太郎side




「もーらいっ」


「あっ!昨日もあげたのに…!」


「へっ、食うのが遅い梓が悪いんや」



ここは新撰組。


前々から遊んでくれていた近所の子供達にとって、兄のような「そーじ」こと沖田 総司との縁がまさか俺を変えてくれるなんて。

でも一番俺を変えてくれたんは、頼りないくせに勇気ある梓なのかもしれへんと、最近になって思った。



「ズルするんちゃうで梓」


「うん、朔太郎も」


「当たり前や!これは真剣勝負なんや。いくで、───よーいどんっ!」



長い廊下の端から端。

それぞれ一枚の雑巾を滑らせるように競争。
それが梓との日課となっていた。


ドタドタバタバタ。

騒がしい音が響いたとしても、道場から聞こえてくる男達の声に比べれば可愛いもんや。



「あっ、ちょっ、朔太郎いま蹴った!!」


「お前が出だしちょっとズルしたからや!!」


「わっ、痛いよ…っ!」



咲と離れたことも、父親が居なくなったことも。

この場所は少しずつ中和してくれる。

新撰組は俺が思っていたよりも怖い場所やなかったらしい。



「うるせえぞガキ共!!会議中だっつってんだろうが!!」


「うわっ土方さんや!!逃げるで梓っ!」


「あっ朔太郎待って…!」



まぁ色んな意味で怖いんやけど。



< 176 / 464 >

この作品をシェア

pagetop