浅葱色の約束。
「朔、お茶お願い」
「そーじ…、斬り合いになったん…?」
「…まぁね。梓には秘密にしといて」
俺にとってそーじは遊んでくれる兄ちゃんやなく、少しずつ新撰組の一番組組長なんやと変わって来ていた。
巡察から帰って来た隊服には返り血のようなものが付着しているのに、男は笑っている。
だから“そーじ”って呼ぶのも、そろそろ生意気に思われちまうかもしれへん。
沖田さん、沖田さん、頭の中で何度つぶやいても結局は「そーじ」と呼んでまう。
「なぁそーじ、なんで梓には秘密にするん?」
いつもそうやった。
返り血を浴びたとき、人を斬って帰って来たとき、そーじは必ず「梓には言わないで」と俺に口止めをする。
お茶をコトリと文机に置くと、書類に筆を落としている珍しい姿が土方さんみたいやと思った。
「…あの子にだけは人斬りだと見られたくないから」
「え…?」
「ううん、なんでもない。それより朔、梓をあまり虐めちゃ駄目だよ」
今更遅いわ。
ちゃんと俺には聞こえていた。
そーじらしくあらへん、けれど本心なんやろうと悟ってしまえる言葉。