浅葱色の約束。
「これを食べなさい」
懐から出した風呂敷、笹の葉に包まれた握り飯。
白いお米が立っていて、思わず喉がゴクリと鳴った。
ここにいる人達はどうしてこんなにも優しいのだろう。
味わったことのない温かさに、夢のようだった。
見ず知らずの人にどうしてここまでするんだろう、そんなことが出来るのだろう。
「少し前に君の姿を見つけたんだ。ただその時は巡察中だったから足を止めることが出来なかった」
すまない───そう言って男は頭を下げる。
どうしてそんなに優しくしてくれるの?どうしてあなたが謝るの?
ありがとうございます。
って言わなきゃ…言わなきゃなのに、言葉が出てこない。
「腹が減っているだろう?もう店もどこも閉まってる時間帯だ」
少し頭を下げるように、遠慮がちに差し出された握り飯を掴む。
その人は優しく微笑みながら「食べなさい」と、もう1度言った。
口に運べば食欲は後からもっと出てくる。
「ははは、ゆっくりで構わない。これは君に作ったものだ」
止まることを知らない野良犬のよう、2つあったものをペロリと平らげてしまった。