浅葱色の約束。
そんな私を男はじっと見つめ、何かを考えているようで。
「帰る場所はあるのかい?」
「───…帰る…場所…?」
「まさかここで一夜を過ごそうとしていたのか?」
もちろん───そう意味を込めてコクンと頷いた。
行く宛てなんて無い。
引き取ってくれるような人だっていない。
帰る場所なんか、最初から無い。
そうやって今までだって生きてきた。
自分1人しかいないのだ。
だれも助けてくれなんてしない。
「君は幾つかね?十二くらいか?」
「……じゅう、さん」
誕生日なんかないから、その年だってことしか言えない。
「…そうか、随分と幼く見えるな」
優しく笑ってくれる人。
やっぱりここは、天国。
絶対に天国だ。
もしかしたら私はずっと死に急いでいて、死に場所を探していて。
どこかでこうなることを望んでいて。
「…トシに怒られてしまうかな」
独り言のように呟いた男は、私の腕を引いて広い背中に乗せた。
その上から毛布を被せ、周りから隠すように。
初めてのことだらけだ。
今日は、やっぱり変な日。