浅葱色の約束。
冷たい眼差しだった。
今すぐに腕を振りほどいて、この男は行くつもりなのだ。
斬り合いになるだろうと隊士たちはヒソヒソ話していた。
これはきっと並大抵のことではない。
あの少人数で浪士相手に斬り込むのだから、と。
「───最悪、…死ぬで。」
そこに居たのは初めて会ったときの少年ではなく。
あの日、妹を殺さないでくれと願っていた少年でもなく。
私の知らない、どこか瞳の奥に哀しみを宿らせた青年だった。
「労咳は死病や。…どうしたって助からない」
耳が遠くなる。
目眩がするほど呼吸が乱れ始めた。
でも───…
「駄目だよ、土方さんの命令だから…」
「命令…?命令の上でしかお前は動けんのか?」
「ち、違うよ!でも僕達になにが出切るの…?」
「なにが出来るのって……お前がそんなに弱い奴だとは思ってへんかったわ…!!」
背中を向けた朔太郎はもう手の届かないところへ行ってしまったみたいだった。
もしかしたら最初から手なんか届く相手じゃなかったのかもしれない。
私と朔太郎はそもそも生きてる場所が違う。
時間が違う、時代が違う。
全部、違う。
「約束したやろ…、立派な武士になるって…」