浅葱色の約束。




外は雪がようやく止んで、冬の冷たい風が頬を撫でる。


捕らえた浪士数名、命を失った隊士数名。重症の平助、永倉も親指を負傷。

近藤さんは何とか無事だったようだ。

手柄を取れたことは純粋に喜ぶべきなのに、素直にそうは出来ない。


失ったものが多すぎる。



「今回は怒らないであげてくれませんか。この2人が居なかったら僕は死んでました」



背中におぶるそいつの頬には、キラキラと涙の跡が微かに見えた。

出来ればその涙は流させたくなかった。

こいつだけには、そういうものを見せたくはなかった。


…それは多分、俺の甘さだ。



「この町は江戸より寒いなぁ」



鼻を赤くさせながら寝息を立てる少年を見つめ、微笑む総司。


暗闇に目が慣れたおかげか、月が綺麗に輝いているからか。

その輪郭はハッキリと映し出される。



「…江戸の方が良かったか」


「そうですね。…少し前まではそう思ってましたよ」



だって京の人って冷たいじゃないですか───。

ふふっと相変わらずな冗談交えの返答だとしても、それは別に面白くも何ともなかった。


帰りたいか、江戸に。


俺はこいつに今そう聞いたのだ。



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