浅葱色の約束。
我が儘
狭い蔵の中、頼まれた備品を手探りで探す。
暗いその場所は灯りを一切入れていない為、夜が続いているみたいだった。
「…あれだ」
土方さんに頼まれた書物というのは、棚の一番上に置かれた茶色く古びた冊子に違いない。
「と、届かない…、」
背伸びをしても少しジャンプしてみても。
もう少しなのに、伸ばした手がつってしまいそうだった。
「ほれ」
スッと後ろから伸ばされた手は、簡単にその書物を掴んだ。
あの夜、池田屋事件からもう半年が経って。
冬は通り越して春も過ぎ去った。
「…ありがとう朔太郎」
「どんどん差が出てるやん。梓“先輩”」
ニヤァと悪戯に笑う声は前よりもまた低くなった。
先輩なんて思ってもいないくせに。
また背が伸びてしまった少年は、もう少年とは言えない。