浅葱色の約束。
「おい、」
中庭で戯れる2人の後ろ、鬼の副長は腕を組みながら自らこちらに向かってくる。
いけない、頼まれていたんだった。
サッと朔太郎から離れて、すぐに土方さんの元へと。
「書物を持ってくるだけで半日はかかるのかてめえは」
「…まだ半日もかかってないよね朔太郎」
「比喩だろうが馬鹿。ならさっさと持って来やがれ」
「馬鹿って…!」
そんな掛け合いはいつしか日常茶飯事になっていた。
土方さんはこういうとき、鼻でふっと笑う。
もう共に暮らして2年になるのだ。
さすがに慣れたものだった。
本当に家族になれちゃうのだと。
「わっ…!」
土方さんは私から書物を奪うと、今度はワシャワシャと頭を撫でてきた。
なにするの───と、少し睨んでみる。
だけど嫌じゃない。
むしろ心がほんわかと温かい。
「…おめでとう」
呟いたその人へと、思わず瞬きを数回繰り返してしまった。
そんな私にまた少し微笑んだ土方さん。
「誕生日だろ今日。夕飯は女中にお前の好物を作らせる」
…あ、そういえば。
最近はみんなバタバタしててゆっくり季節を数えることも出来ていなかった。
「具無しのおにぎりだけど文句言わない…?」
「…沢庵ぐらい付けとけ」
あれからまた1年が経った。