浅葱色の約束。




「沖田さん、また来ていい?」



理由なんか無くても、ただ顔を見たいだけでも。

こうして会いにきて少しお話して。


沖田さんが寝ていたとしても、私はずっと1日の出来事を話すよ。

出会った頃は出来なかったような思い出話もしてみたい。


あなたが見た私を知りたい。



「…もちろん」



伸ばされた腕は私を掴むことなく、スルッと布団の上に落ちた。

そして、目を伏せる。



「梓、…近藤さんをお願い」


「沖田さん…?」


「どうか守ってあげて。…悔しいけど僕はもう───」



冗談なんかじゃない。

彼はもう覚悟をしているのだ。

やめてよ、そんなこと言わないで。
沖田さんは必ず戻って来てくれる。


近藤さんだって待ってるんだよ。



「これからもっと僕の体は今より動かなくなる。そしたら一番組の組長もお役御免。…そうなったら終わりだ」



終わるのは新撰組じゃなく───この人自身なのだろう。


彼が言っているのは命の終わりではなく、生きる理由の終わりだ。

沖田さんの一番はいつだって新撰組と近藤さんだった。


その為なら自分の命なんか見向きもしない人。



「───嫌だ。」



口から出た言葉は子供の我が儘に似た言葉。



< 217 / 464 >

この作品をシェア

pagetop